ボルダリングの体操化に想う
ここ数年、大きなボルダリングコンペで登られる課題に変化が起きています。
旧来のボルダリングの課題は、基本的には一手一手の保持力で解決できる事が多かったのですが、
最近はコーディネーション等、全身を使って体の重心の加速度の制御を行う様な、体操競技の様な課題が増えてきています。
(コンペによっては保持力系の場合もあります)
これにはクライミングホールドやボルダリングジムの大型化などの要因があるのでしょうね。
そんなわけで今、ボルダリングの体操化が進んでいます。
それは、体操経験者がコンペ上位者に増えてきたという点でも明らかです。
体操競技とは、技の難易度や安定感、美しさなどを競うものです。
ボルダリングコンペでは美しさこそ競いませんが、次の一手を取るために、想定通りに全身の筋肉を制御しなければならない、という点では同じと言えるでしょう。
そして、選手には年々複雑な動作が求められてきているという点において、
フィギュアスケート、スキー・スノーボードのハーフパイプ、そして前述の体操など、技の美しさを競う競技と似たところがあります。
フィギュアスケートで言うと、10年前だと3回転半で良かったのに今では4回転が普通、という時代の流れが、ボルダリングの世界にも存在しているのですね。
ただそれらの競技と大きく異なるところもあって、
それはボルダリングはミスが結果として表れやすいという事です。
フィギュアスケート選手の優劣を決める要素には演技構成点やらGOE(演技の出来栄えによる評価の加減算)というものがあって、それは人間が決めるものです。
人間が決めるものですから、採点者が異なれば結果が異なるという事もあり得ます。
ボルダリングコンペでは、ジャッジはいますが、採点するわけではありません。また、機械が採点するわけでもありません。
ですから、ボルダリングでは、体の制御を正しくできるか間違うかによって、
課題を登れるか、登れないか、
という分かりやすい結果がでるのですね。
私はどちらが良いか、という事は言いませんが、判定に疑惑が起こりにくく、誰でも応援しやすい競技と言えるのではないでしょうか。
それから、もう一つ違いがあるとすれば、
それは、ボルダリングのムーブには無限のパターンがある、という事です。
フィギュアスケートや体操では既定の技があり、それをどれだけ美しく再現できるか、という点が問われるのに対し、
ボルダリングでは毎回違った配置のホールドや壁を登る、という事をしますので、既定の技というものがありません。
状況(ホールドの配置や壁の角度)に応じて、課題ごとに異なる動きをしなければなりません。
つまり、先に挙げた競技と比較すると、状況対応力が問われる競技と言えます。
そんな感じで、体操の様な動きをするボルダリング課題が増えているわけですが、
アスリートとして活躍したいクライマーは別として、
保持力メインで登ることが悪いわけではありませんので勘違いしないでください。
外岩メインのクライマーは、コーディネーションよりも保持力でしょう。
(外岩でコーディネーション課題が増えたりして)
その前に外岩を楽しむ事は競技ですらないわけです。
どんなスタイルで登ろうが、ボルダリングは楽しければいいと思います。
人それぞれです。